新宿から電車で90分ほどかけて自宅に帰るのに本が無性に読みたくなって、ルミネの本屋に寄ったら、面出しされていた今井むつみ先生の名前が目に飛び込んできて、即購入。去年、玉川大学の赤ちゃんラボに参加したことがあって、そのラボの一員に今井先生の名前があったのを覚えてたのよね。
今井むつみ先生研究室HP
玉川赤ちゃんラボ
ここ数週間ずっとフィクションの小説漬けだったから、言語学についての研究や学問についての文章を読むのはとても新鮮で面白かった。私が直接興味があるのは、子どもが言語を学ぶ過程と、その中でも2言語を同時に学ぶ(つまりバイリンガル)ことについてなんだけど、いろんな記事や文献を読んでいると、面白い研究をしている先生や学者の人たちを知るようになって、あちこち寄り道しちゃうんだよね。でもこの寄り道がすごく好きです。
この今井先生の本も外国語を学ぶことに直結した内容ではないけれど、今まで知らなかったような視点でことばを学ぶことについて触れることができて、非常によかった。
読みながらdog-earしたところをメモ。
・文章の区切りを知るということ。
・英語は発音の正確さよりもイントネーション、アクセントが大切=シェラトン
・目が見えない、音が聞こえない、ヘレン・ケラーの話
ことばは伝えあうためのものだ、ということに気づく。
・子どもがことばを理解するステップ
1)モノに名前がある、2)動作に名前がある(その他に色・模様・気持ちなど)
・「同じ」の基準について――「数えられる」「数えられない」の区別
・メンタルレキシコン「心の辞書」
私たちは記憶の中に何万語もの単語を持っていて、人の話を理解し、文章を読み、自分の言いたいことを表現することができます。
※メンタルレキシコンと言えば門田修平先生。
この本、途中まで読んでそのままになってる……。もう一度読み直そう。
・「アゲル」「モラウ」「クレル」 日本語って難しい!
I gave you
a present. プレゼントをあなたにアゲル
He gave me
a present. 彼が私にプレゼントをクレタ
I got a
present from grandpa. おじいちゃんからプレゼントをモラッタ
英語では全部giveなのに!
また、日本語ではおんぶと抱っこを言い分けるのに対し、英語はcarry。
Carry me on
your back. / Carry me in your arm. / Carry me.
「背中で抱っこ」という表現。(俵万智さんの『ちいさな言葉』より)
・動詞の役割を果たすオノマトペ
「エイってする」「ポーンってする」「チョキチョキする」
確かに! オノマトペって動作や感情を音で表現したものなんだということは理解していたけれど、それを動詞として使っているという感覚はなかったから新発見。さらに、それが子どもが動詞の使い方をマスターするのにかなり重要な役割を果たしているんだなとわかりました。
※そもそも「オノマトペ」とは、フランス語で擬声語を意味する言葉だそう。それすら知らなかった!
そういえば、オムツをゴミ箱に捨てに行くときに子どもが自分で行きたがるので、私も最近よくLet’s go ポイ.「ポイしに行こう!」って言ってる。
・「アナロジー」とは
日本語では類推。すでに知っていることを使って、それと似ている未知のことについて推測するという推論。キーになるのは「似ている」ということ。
例)手を怪我した子どもに「手当てしてあげるね」と言ったら、「違うよ。足当てだよ」と。
英語でもerをつけると人を表すんだというアナロジーが働いて、cookerと言うことばを作る子どもがいたり。
子どもがつくる新しいことば。うちの子がどんなことばを創造してくれるのか今から楽しみだ。
・大人の外国語の学習――「本当に知っている」とは?
wearという単語を日本語に訳すと「着る」。だけれども英語で「洋服を着る」と言うときにはwearではなくput onを使う。確かに。この本を読んでハッとしたよ。子どもに服を着なさいというときはGet dressed. / Put your jacket on.などと言うので、wearは使ってないね。解説によると、
日本語では「衣類を身につける」ことを表す動詞は、身につけるモノによって言いわけます。例えば着る(上着、ドレスなど)、履く(ズボン、靴など)、かぶる(帽子)、かける(眼鏡)、する・つける(アクセサリー、香水)。一方、英語ではヘアスタイルや「香水をまとう」という意味でもwearを使います。
そうだよねー。ふむふむ。こういうところに気が付けるところがさすがだよね。普段使っていることばについて、ちょっとだけ立ち止まって考えてみる、こういう作業がなかなか難しいんだよね~。
つまりひとつの言葉の境界線は言語によって異なるのね。それを感覚的に身につけて、使うことができるようになるということも含めて外国語の学習なのね。赤ちゃんの場合は、この境界線が自然にできているけれど、大人が学習する場合にはとくに、この境界線の違いに注意を向けることが重要。
・保育士さんと子どもの会話の研究――数学能力についての調査@アメリカ
終章(p.230)に興味深い研究の話がありました。保育士さんの数学語りの量と質が、子どもの数学能力に影響するという内容です。終章なのでちらっと触れているだけですが、もうちょっと具体的に知りたいと思い調べてみたら、この研究の論文がネットにありました。(参考文献のところにちゃんと書いてあったので、すぐ見つかった)
英語で論文読むのって結構疲れるんだよね。でも読んでみよう。
・やっと「認知科学」の理解の仕方がわかった
言語学とか社会学っていうのは漠然とどういう学問なのかわかるような気がするんだけど、認知言語学とか認知科学っていまいちつかみどころがなくて、よくわかっていなかったんです。でも今井さんの終章を呼んで「なるほど、そういうことね」と理解しました。
認知科学は人間を理解するための総合科学です。人はいかに考え、問題を解決し、意思決定をし、学習し、記憶するか。外から目で見ることのできない人の心の働きを科学的に明らかにしようとする学問です。(中略)そこで私は「言語」に焦点を当て、人が言語を学習する過程と、言語を理解して使う時の心と脳の仕組みを科学的に明らかにし、そこから人間全体を理解したいと思い研究を続けています。
・おすすめの本の中から読んでみたいと思ったものメモ
『日本語と外国語』鈴木孝夫
『心と脳――認知科学入門』安西祐一郎
そして今井むつみ先生の新刊は早速ゲットしました。小説サイズのつくりなんだけど、1470円って結構高いよね。でもそれだけ内容があるんだと思います。同じジャンルの本を続けて読めないないので、しばらくしてから読みます。(こうやって積読本になっていくんだけどね……)。